欧州美味いもの巡り

欧州美味いもの巡り

欧州、主にイタリア、スペインの美味しいレストランの記録。Nikon Z6片手に旅行しています。

カラオケの流儀

MBA留学中、世界各国の生徒たちとカラオケに行く機会が多かったです。アジア人は勿論、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、どの地域の人も基本的にはカラオケが大好きです。ただし、欧米社会でのカラオケは日本とは少し違った進化を遂げているように思います。パーティー文化の欧米では、カラオケというと酒飲みながらみんなで大合唱、という感じで、少人数で一人ひとり平等に歌うという日本のカラオケとは少し違いました。誰がマイクを持っているかなんて関係なくみんなで歌って騒ぐという感じです。

 

クラスメートと何度もカラオケにいく中で、私はこれまで経験してきた日本式のカラオケが、いかに日本の国民性というか、精神性を深く反映したつくりになっているかということを深く考えさせられました。

 

日本人式カラオケのルールやマナーを知らない外国人とカラオケに行ったとき、日本人からして特に許せないのは、順番を待たずに曲をばんばん入れていくことです。しかも一人で何曲も入れる。私は入れたから次はあなたね~みたいな気づかいは全くありません。下手したら一人で10曲くらい平気で入れます。

ただし、みんなが知っている曲を入れること、という暗黙のルールはきっちり守っています。10曲入れる人も自分が歌うから入れるというよりは、これもあれもみんな知ってる曲だよねみたいな感じで入れていくのです。

 

なぜそうなるのかというと、デンモクがないからです。よくシンガポールでカラオケに行っていましたが、だいたいどのカラオケでも写真のようなタブレット的な端末がテレビの横に一台備え付けられているだけです。これは取り外せないので、自分で端末のところまでいって入力する必要があります。これが結構面倒くさいのです。しかも曲も探しづらい。

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海外でよくみる固定式デンモク

日本だとリモコンが一台か二台あって、一曲入れたら律儀に時計まわりに回していくでしょう。シンガポールの固定式デンモクではそれができないので、必然、意欲のあるやつが立ち上がって曲をたくさん入れる方式になっていきます。いちいち立ち上がるのも面倒だし、デンモクに群がる入れたがりの人に入っていくのも億劫なので、まあ流れてきた曲を歌えばいいか、となります。

 

ひとしきり盛り上がると、「あ、これ歌いたい」みたいな瞬間が当然来ます。そうすると曲を入れまくっていたやつが気持ちよく歌っている隙にデンモクにいき、自分の曲を入れるわけですが、ここで問題が発生します。待ち曲が多すぎるのです。

 

日本のカラオケ文化になじみのない外国人と10人くらいでカラオケしていたとしましょう。始まって一時間もすると、間違いなく待ち曲が30曲はあるはずです。当然今入れたとしても、時間内にその曲はやってきません。そうするともう割り込みするしかありません。

 

そう、日本のカラオケ文化を知らない人は、ガンガン割り込みをするのです。日本のカラオケで割り込みをするなんて、これほどのタブーはありません。会社の飲み会で割り込みが許されるのは、時間に遅れてやってきた重役だけです。当然、えらい人の曲の前で割り込みすると問題があるので、ザコ社員が入れた曲の前で素早く割り込みをしなくてはいけません。

 

割り込みが多発して、「あ、俺の入れた曲一生まわってこねえ」ということが分かり始めると、皆が割り込みをし始めます(≒順番を勝手に入れ替える)。そうすると別の問題が発生します。そう、開始早々入れて律儀に順番待ちしていた曲が永遠に回ってこなくなるのです。

 

これは結構ストレスフルです。20分前に見たときはあと4番目だったので、次来るだろと期待していると、それまでリストになかった曲がどんどんかかり始め、おかしいなと思ってリストを見ると、入れた曲が17番目くらいに繰り下がっているのです。

 

それでも歌いたい場合は、こちらも負けじと割り込みをするしかないのですが、上述のように割り込みタブーの文化で育った我々日本人にはそれがなかなかできないのです。今割り込みしたら、次こそはと待っていた人が嫌な顔するかもしれないと思ってしまうのです。しかし、そいつも割り込みをしているクズなので、全く気にする必要ないのです。もちろん、割り込みに対して割り込み返しされる可能性もあるので、割り込みするなら今流れている曲が終わるタイミングがベストでしょう。そこまでのテクニックはまだ外国人には知られていません。

 

まさにカオス、まさに戦場です。順番など気にせず、歌いたいものを好きなタイミングで歌うというのが、海外ではふつうなのです。これを経験すると、日本人だけのカラオケがいかに整然としていて、思いやりにあふれていて、効率的に運営されているか、ということに思いをはせざるを得ないのです。背景には、一曲入れたら次はあなたね、と手渡しできるようになっている携帯式「デンモク」の存在が大きいのでしょう。携帯式デンモクの開発者が、このような日式カラオケの流儀を考えて作ったかは定かではありませんが、間違いなく日本人の精神性に深く\根差した発明といえるでしょう

 

また、日本人のカラオケでは、「場の雰囲気」という、日本人以外には極めて理解が難しい要素を考慮に入れて、曲選びをするところがまたすごいのです。日本人はカラオケの二時間をさながら舞台に見立て、起承転結を作るがごとく選曲を行っています。出だしはだいたいみんなが知ってるupbeatの曲、中盤はやや緩い系で、最後はまた盛りあがる曲、みたいなことを誰しも考えながらカラオケをしているでしょう。バラード系は場の雰囲気に応じてのみ可、間奏が長い曲はNGなど、考えることは多岐にわたり、曲選びは一種のスキルといっても全く差し支えないでしょう。

 

これは世界的にて本当に高尚なスキルなので、ぜひ英検のように検定化して、グローバルなスキルとして広めていくべきです。「現在夜10時、取引先との契約締結を祝う会の二次会で、50代部長、40代課長2人、30代課長補佐と20代のあなたでカラオケに来ました。最若手のあなたが一発目に歌う曲としてふさわしい曲を挙げなさい」みたいな検定があったらどうでしょうか?登場人物に取引先の部長を登場させたらさらに難問になりますよ。日本式カラオケを知らない外国人は、皆が知っている曲を入れるという最低限のマナーを守る人は多いですが、時間とともに、または場の雰囲気とともに選曲を変えるという高等スキルを持つ人はほぼいません。

 

ほぼ、と書いたのは、例外がいるからです。フィリピン人です。彼らのカラオケにかける情熱と、社会での根付き方は日本と同等かそれ以上かもしれません。以前、フィリピン人のクラスメートと上述のようなカラオケの流儀に関して語り合ったことがありますが、彼らも場の盛り上がりや雰囲気などを考えて選曲すると言っていました。さすがです。

 

このような日本におけるカラオケの進化は、やはりビジネスにおける重要なコミュニケーションツールとして発展していったことと深くリンクしている気がします。話が逸れますが、以前外資系の証券会社で働いたとき、社内カラオケで外人部長が歌うはずの曲が、操作ミスでイントロ中に中断されてしまうという大事件が起きました。その時の取り巻き社員たち(日本人)の慌てっぷりは半端なかったですね。私ら新入社員に「お前いまなにしたかわかってんのか?」みたいなすごい剣幕で、今すぐ何とかしろと3人くらいに同時に詰め寄られました。絶対その外人部長は気にしていないはずですが、皆それが原因でクビになることを本気で恐れているような狼狽ぶりで、ああ、会社のカラオケは遊びじゃないんだ、そして、上司に認められるためには心まで犬にならなくてはいけないのか、ということを強く学びました(後者はその会社、というか業界が異常なだけだったと後からわかりました)。

 

仕事のしがらみから離れ、利害関係のない友人たちと純粋にカラオケを楽しんだ後だからこそ、日本のカラオケ文化、流儀に思いを馳せざるを得ませんでした。

 

最後に、1985~95年生まれ世代の外国人とカラオケに行ったときに、絶対に盛り上がる鉄板曲を参考までにご紹介します。日本でも有名な曲ばかりです。Despacitoはスペイン語話者、最後のCon Te Paritoはイタリア人の鉄板です。

 

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