美食の街といえばスペインはサン・セバスチャン。気合を入れて7月の終わりに3日間滞在し、昼夜問わずバル巡りを満喫してきた。
色とりどりのピンチョスを並べるバルを覗きながら食べ歩くのは楽しかった。が、思っていたよりも観光地化が激しくて、お店は当たり外れがあった印象。
総評
個別のレビューに入る前に、全体感から。恐らくサン・セバスチャンのバルは4つに分類できる。①トラディショナル系、②創作系、③一点突破系、④その他特徴のないバル。だいたい人気があって混みあっているのは①
いったお店を勝手に分類すると、
①大御所:Borda Berri、La Cuchara de San Telmo、Grandarias
サン・セバスチャンといえば、というくらい有名なお店たち。どれもまあ美味しいのだが、これと言って驚きはなかった。何より混みすぎていて、全然落ち着いて食事できない。注文取ってもらうのも一苦労だし、そのあとちゃんと注文を受け取るのにも気を使わなきゃいけない。皆テーブルが空くのを待っているので、食べ終わったらすぐ退散。全然落ち着かないため、味わって食べるのが難しい。
②モダン系:Urola、Atari、Bar Bergara
ちょっと変わり種を提供するお店。モダンスタイルなお味で美味しい。今回11件試した中でもUrolaとAtariが一番良かったと思う。そこまで混んでいないしゆっくり味わうことができる。
③一点突破系:Bar Nestor、Txepetxa、La Vina
看板メニューがあり、それを頼めば間違いなし
④一見さんホイホイ:Munto、Baztán Bar Restaurante
ところ狭しとピンチョスが並ぶお店は注意。正直カウンターに並ぶピンチョスは見た目ほど美味しくない。作ってから時間がたっていて冷たいし、パンもべちゃべちゃになっている。電子レンジで温めてくれるが、そもそもレンチンした食べ物が美味しいはずがない。
滞在中は、できれば①~③からバランスよくお店をチョイスしたい。
今回一番お勧めなのはUrola。ほぼ同列でAtariでした。大御所系は期待ほどではないという印象で、並んだり席取りしたりする手間を考えるとUrola、Atariのほうが断然お勧めです。
サンセバスチャン攻略法
先に述べた通り、人気店は兎に角混んでいるので、美味しいバルに絞って優雅にはしごする、というのは結構難しい(行ったのが真夏のピークシーズンだったのはあるけど)。人気店を狙うなら、まず開店直後に行っていい席を確保。二件目以降も人気店を狙うなら、人込みかけ分けてオーダーを取ってもらう突破力が必要で、結構大変。昼、夜で一件ずつ狙っていく、というのが正しい攻略法な気がする。
ちなみに各店お休みの日がバラバラなので要注意。火曜日でも閉まっているところが多かった。
あと自分好みのバルを見つける方法として、トリップアドバイザーのレビュアーをフォローするというやり方がある。我々の場合は、最初に入ったMuntoに微妙な評価をつけていたHiyokokkoさん(大半の日本人が微妙な評価をつけていたが)、Urolaに高評価を与えていたTravelfreakさんをフォローし、このお二方がお勧めしているお店に足を運んでみた。やはり好みの合う方からの情報が一番参考になる。好みの合うレビュアーを見つけるという意味では、一回くらいしょうもないお店に行ってみるのも手かもしれない。
各レストラン評価
大御所 1:Borda Berri
San Sebastianで一番人気のバル。
名物の牛ほほ煮込み、ヤギのチーズのリゾット、マグロのグリル。
牛頬煮込みは柔らかく口の中でホロホロと崩れる。美味しいけど正直牛ほほ肉の美味しさには上限がある。友人から「絶対に試してみろ」と強く勧められたが、正直日本人にはなじみのある味な気がする。リゾットはどうやら米でなくパスタを使ったものらしい。ヤギのチーズ独特のお味だが臭くはない。コクがあって大変美味しい。マグロのグリルは上に乗っている味の濃い野菜(玉ねぎと何か)が微妙。柚子胡椒のような味。
どうしてももう一度食べたいみたいな感動はない。
大御所 2:La Cuchara de San Telmo
ステーキ、フォアグラ、タコのグリル。
どれも美味しいが極めてstraightforwardなお味。写真以上のサプライズはない。お値段も高め。
大御所 3: Grandarias
ステーキ、フォアグラ、リゾット、ホタテ、ウニのピンチョス。ウニのピンチョス以外は別途オーダー。
ウニのピンチョスを見かけて大興奮でオーダーしたが、どこにでもある定番のピンチョスだと後から知った。
どれも美味しいけど、正直いって普通。
モダン系 1:Casa Urola
今回一番美味しいと思ったお店。料理は創作系。
ホタテ:グリルしたホタテ。クリームスープはビシソワーズ風でなめらか。砕いたナッツと味がついたノリがアクセント
ビーフステーキ:柔らかい。付け合わせのソースは、アリオーリソースを伸ばしたような味わいでほんのりとチーズが香る。
マッシュルーム:弾力があり食べ応えのあるマッシュルームグリルを、ホワイトソースと絡めて頂く。ホワイトソースはビーフステーキの付け合わせと一緒だと思われる。このソースがパスタを絡めて食べたいくらい美味。卵と混ぜるとさらにこくがでる。
トマトサラダ:トマトの上にツナ、スライスした玉ねぎ、刻んだペッパーの酢漬け。ツナの旨味と玉ねぎ、ペッパーのさっぱりさが合わさって美味しい。
デザート:イチゴのケーキ、アイスクリーム添え。イチゴソースをかけてくれる。ケーキは二層のクッキーの間にたくさんのイチゴとカスタードクリーム。下のクッキーはホワイトチョココーティングされたしっかりしたクッキー生地、上はもう少し薄めでぱりぱりしたクッキー。
クッキー、カスタード、アイスはそこまで甘くなく、イチゴの甘みを楽しめる。
お酒とコーラ、エスプレッソ二杯で41ユーロはなんかの冗談かと思う価格。本当に行ってよかった。
モダン系 2:Atari
人気店だがオンラインで予約可能。前日に13:30の屋外テーブルを予約。
テーブル席ということで、ピンチョスでなく皿料理をオーダー。
頼んだものすべて美味しかった。メニューは豊富で何を頼むか迷う。一つ一つのポーションが小さいので色々試せるのもうれしい。5,6品食べて飲んで一人20ユーロもしなかったと思う。落ち着いたテーブルでコスパ抜群の料理を楽しむことができ超満足。
アンチョビはシェリービネガー漬け。上にたっぷりのオリーブオイルとニンニクチップ。ニンニクチップの香ばしさが引き立つ絶品。
豚肉を使った何か。上にのっているのはマンゴーだったかな。しょっぱさと甘さのコンビネーションがとても美味しかった。
ステーキとマッシュルーム
フォアグラとパン。ソースはトウモロコシ。パンがサクサク。
みたまんま。
振り返ってみるとここがナンバーワンであった。テーブル予約が絶対にお勧め。
モダン系 3:Bar Bergara
薄暗くてちょっとアングラっぽい雰囲気のバル。
メニューもちょっと変わっている。今回はFlying Birdと名付けられたうずらのから揚げ、アンチョビ、自家製ピクルス、名物のミニハンバーガー。
どれもまあまあ。ポーションが小さいのでこれといってすごくお勧めする理由がない、という印象。再訪はないかな。
一点突破系 1:Txepetxa
アンチョビのピンチョスに力を入れているお店。アンチョビのピンチョスは色んな味付けが10種類くらいあり、選ぶのが楽しい。アンチョビはほぼすべてシェリービネガー漬けで、日本人が大好きな味。
特に美味しかったのはブルーベリー。酸っぱさと甘さのコンビネーションが最高。またウニやフォアグラといった美味くないわけない、という組み合わせも、期待通りの美味しさ。
一点突破系 2:Bar Nestor
トルティーヤ、ステーキ、トマトサラダ、しし唐のグリルの4品しかない、フォーカスの効いたお店。特にトルティーヤは予約制だということで、開店1時間くらい前にお店に向かった。
既に先客が8人くらい。すぐに店主がカウンターから顔を出し、順番に名前と人数を告げる。無事二人分予約できた。
開店と同時にお店に向かうと、店内は既に大混雑。なんとかカウンターにスペースを見つけて飲み物をオーダーしていると、巨大なトルティーヤが登場。店主が丁寧に切り分け、その都度予約者に配っていく。やはり事前情報通り、予約者だけで終わってしまった模様。
トルティーヤは甘い玉ねぎととろとろの卵が混ざってとろける美味しさ。同時にオーダーしたトマトは、シンプルにオリーブオイルと塩の味付けでいたって普通。Urolaのトマトのほうが美味しかった。
問題はステーキを注文するか否か。どうやら1キロくらいが最小単位らしく、二人ではなかなか厳しい量。結局、ここでお腹をいっぱいにするのももったいない気がして、ステーキは頼まず撤収。美味しそうだっただけに残念。
要するにこのお店はトルティーヤとステーキの二品で勝負しているわけだが、激戦区サン・セバスチャンで生き残るための誠に素晴らしい戦略であると思う。数あるバルの中で、「このお店といったらこれ」とブラディングできているお店は少ない。トルティーヤもその場で売ればいいものを仰々しく予約制などにするから、希少性を求めて余計に人が集まる。メニューが少ないからオペレーションコストも低い。まさにいいこと尽くし。店主の経営手腕に脱帽です。
一点突破系 3:La Vina
チーズケーキといえばLa Vina、と聞きチーズケーキだけ食べに訪問。5ユーロで二切れついてくる。適度な甘さと柔らかさで、人気なのも納得のお味。デザートに最適。
一見さんホイホイ 1:Munto
所狭しと並ぶピンチョスに惹かれて入ったが、どれも普通。
一見さんホイホイ 2: Baztán Bar Restaurante
ぶらりと入った。ピンチョスバーからマッシュルーム(ヒラタケみたいなキノコ)とエビとイカの串焼きをチョイス。別途フォアグラをオーダー。
マッシュルームは豚肉と見間違えて取ってしまったが、これは明確に美味しくなかった。全く味付けしていないみたいでマッシュルーム独特のニオイがきつすぎる。エビとイカの串焼き、フォアグラは極めて普通。